箱庭の世界

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噴水の周りには鳩が集まっていた。

椅子の下にはアリジゴクの穴が点在している。

辺りではアリ達がせわしなく動いていた。

その上から、桜の花びらがゆっくりと地面に降りてゆく。

公園は親子連れに若いカップルや、ゲートボールをする老人達で賑やかだ。

そこに、ふと忘れられたように灰色の服をまとった紳士がベンチに腰かけていた。

その視線はどこへ行くでもなく、あてもなくさ迷っていた。

地面を這うアリの行軍を見ているかと思えば、灰色の群れに混じった白い鳩へと向けられる。

そうして日も傾き始めた。

公園にいた人達は、一人二人とそれぞれが待つ家へ帰っていく。

しかし紳士はじっと椅子に腰かけてその様子を眺めていた。

辺りが暗くなった頃、彼はやっと立ち上がった。

ひょいと箱庭へ伸ばされた手が触れると、紳士は人形に姿を変えた。

子供の目をした無邪気な神様は、次の箱庭へと彼を運ぶ。
ファンタジー
公開:21/03/09 07:00
更新:21/03/09 05:58

水鏡かけら( 日本 )

執筆のリハビリがてらに、書いております。
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