孤独な男

俺はなぜここにいるのだ？
記憶喪失ではない。存在意義の話をしているのだ。

この不公平な世の中で、少しでも弱い者を助け、不正のない世の中にしたいという思いを抱いて、この世界に入ったはずなのに。 新人の頃はろくに話も聞いてもらえず、そこそこの地位に行くことができても、正しい意見は鼻にもかけてもらえなかった。 ようやく、自分のやりたいことができるような地位まで登りつめたのに。

なのになぜ今、俺は、よく分からないウイルスなどに振り回されているのだ？

この間まで同意見だったはずの彼は、重箱の角をつつくように、連日俺を批判する。協力するぞといってくれたのは嘘だったのか。ここにいると誰も信じられん。 神経が、ひどくすり減る。
　
「総理、幹事長との会食のお時間です」と、秘書が呼びに来た。もうそんな時間か。身内の相談もしたいが、あまり深い話もためらわれる。

どうせ記者が張ってるんだろうからなぁ…