雨足跡

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突然、家の外に大勢の人がいる気配を感じて窓の外を見たが、人っ子一人いない。
代わりに、大雨が降っていた。
雨の粒が地面に打ちつけられる度に、足音がする。小さなものから、大きなものまで沢山の足音が何重にも重なり、まるで渋谷のスクランブル交差点にいる気分だ。
地面をよく見てみると、雨水が染み込み、足跡を作っている。
スニーカーの足跡、ハイヒールの足跡、草履の足跡、犬や猫のような足跡もある。
足跡は一人でに動き回り、いつの間にか消えた。
しばらくその不思議な光景を眺めていると、一際大きな雨の粒が轟音と共に地面に落ちた。
雨水がみるみるうちに地面に染みこみ、広がっていく。
染みは人の足跡を優に超えて広がり、やがて大きな大きな足跡を作り、広い歩幅で歩いて行った。
博物館で見たことがある、恐竜の足跡だ。

次々と生まれ、歩き回る足跡を目で追う。幾つもの時代が折り重なり、雨と共に消えた。
ファンタジー
公開:21/03/08 20:40
更新:21/03/08 20:41

リンムー( 東京 )

大学生
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