定時に飛ぶハエ

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「10時15分ね。そろそろハエが来るわ」カムさんはつぶやいた。
今は23世紀、ここはチベットの超ハイテク都市・ラサのオフィス。日本から来た旅人の太郎さんは、首を傾げた。「なぜ、わかるのですか」

カムさんは言う。「ええ。ここ、ラサの地表や道路には、たくさんの磁力発生装置が埋められてます」
「ほお」
「それを利用して、リニア車やリニア飛行機が地上に浮上して移動します。その磁力は分・秒きざみで変わり、磁力の空中の道を作ります」
「へえ」

カムさんは続ける。
「昆虫にも、地磁気を感知して飛ぶ性質があります。ハエや蜂などの虫も、その磁力を読み込んで、効率的に場所に到達する性質を身に付けたのです」

太郎さんは言った。「では同じ時間に待っていれば、ハエたたきで潰せますね」
カムさんは笑った。「ほおっておけば、角を曲って向うへ去ります。せわしない毎日ですもの、せめて人と虫は共存していきましょう」
ファンタジー
公開:21/03/07 15:57

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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