夜が味方だった頃

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それは、あなたと一緒になる前

夜が味方だった頃の話。

甘くてきれいな緑色をしているモスコミュールという名前のカクテルをよく飲んでいた。

ほろ酔いで歩く夜の街は灯りに照らされ他のグループの笑い声がどこかしこで響き合い一体のBGMになっていた。

気心の知れた友達の話を聞き流しながらお酒を飲み意識の輪郭をぼやかすと、この街は、この夜は、私の味方だと思う。

若く美しく時間と体力を持て余し、なんでも出来るような気がしていた。

でも同時に恐ろしく孤独で実態のない不安と、とめどない自己否定に押しつぶされそうになっていた。

泣き出したいから笑っていた。

痛みに耐えるように飲んでいた。

踊るように、歌うように、この夜を駆け回った。

あなたと出会う前の私が何に笑っていたのか、あまりよく思い出すことができない。

でもひとつだけ確かに言えることは、あの頃の私には夜が必要だった。
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公開:21/03/08 23:00
更新:21/03/08 22:12

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