最後のピストル

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「誰しも生きてれば消したい記憶のひとつやふたつあるもんだ―」
師匠言ってたっけ。

俺の右手に収まってるピストルを使えばそれが叶う。打たれた相手は望みの記憶が消える。そう。はじめから無かったかのように。

だから使うたびにしんどい思いをしてきた。もうたくさんなんだ。目の前で“消された側の人間がいなくなる”瞬間を見るのは。

だから俺は今回の依頼を最後にこの職業から引退する。けど依頼主がよりによってあいつだったなんて笑えないオチ聞いてない。

幼馴染のあいつと偶然再会した。無理やり閉じこめていた淡い気持ちがフタを突き破って再燃した音が自分の中で鳴った。

幼い頃虐待された記憶を消したい。あいつの依頼のリミットを迎えた今日、二人でよく遊んだ場所で思いを告げてから打とうと決めた。

当たりが茜色に染まり始めた。時間がない。迷いを振り切り、思いを告げる。
そして俺は自分の頭にピストルを放った。
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公開:21/03/08 00:15
更新:21/05/16 22:27

清水えまい( 東京 )

以前から書いてみたいと持っていたショート×ショート。
ようやく書き始めることができました。
自分自身楽しみながら執筆できたらなと思います♪

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