私が愛した男－４－

―で、その景色、ぜひ見せたい。いつ空いてる？
―お気持ちだけ、いただいておきます。
―かまえないで。ただのドライブだよ。
客からのアプローチをどのぐらい毅然と処理させるか。さじ加減には悩んだ。人工筋肉によって、フルは役者のような表情も表せる。とはいえ、相手がヒート・アップしたら面倒だ。結局、慇懃無礼に近いモードで稼働している。笑顔はプライベート・モードの時でいい。
フルに迫っていた客がヒールを響かせながら、出ていく。その後から、近づいてきたお客に見覚えがあった。月一程度しか見かけないが、テンション高めの客が多い中で、落ち着いた様子が印象に残っている。
―お邪魔してホントよかった。
―ありがとうございます。
―実は、家族のことで訳ありで。ずっと鬱々してたんだけど、フルくんに聞いてもらってるうちにだんだん気持ちがほぐれてきて。救われました。
内面の美しさも伝わったんだ。。。
深く頭を下げた。