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公園へ花見に行くと、桜に規制線が張られていた。
『観賞の際は3メートル以上離れ、5分以内でお願いします』
立て看板の文言に、開封しかけた缶ビールを仕舞う。感染症対策か、騒音やゴミ問題か。満足に花見も出来ないなんて世も末だ。
ただ引き下がるのも悔しいので、5分ずつ全部の桜を見てやる事にした。
他の見物客は帰ったらしく、無人の公園に桜だけが咲き誇る。桜をつまみにビールを飲み歩き、良い感じに回った頃、最後の桜に辿り着いた。
「……綺麗だなぁ」
思わず溜息が漏れた。ひときわ立派な枝ぶり。ほろ酔い加減のピンク色。半分出来上がった俺は、規制線をまたいで桜の根元に座った。
「最高だ。素晴らしい。お前が一番」
幹を抱いてくだを巻く間に、花はますます紅潮し真っ赤になった。
10分も経っただろうか。突然頭から花びらを浴び、俺はひっくり返った。
大量のハート型に溺れながら、二度と警告は無視しないと心に誓った。
『観賞の際は3メートル以上離れ、5分以内でお願いします』
立て看板の文言に、開封しかけた缶ビールを仕舞う。感染症対策か、騒音やゴミ問題か。満足に花見も出来ないなんて世も末だ。
ただ引き下がるのも悔しいので、5分ずつ全部の桜を見てやる事にした。
他の見物客は帰ったらしく、無人の公園に桜だけが咲き誇る。桜をつまみにビールを飲み歩き、良い感じに回った頃、最後の桜に辿り着いた。
「……綺麗だなぁ」
思わず溜息が漏れた。ひときわ立派な枝ぶり。ほろ酔い加減のピンク色。半分出来上がった俺は、規制線をまたいで桜の根元に座った。
「最高だ。素晴らしい。お前が一番」
幹を抱いてくだを巻く間に、花はますます紅潮し真っ赤になった。
10分も経っただろうか。突然頭から花びらを浴び、俺はひっくり返った。
大量のハート型に溺れながら、二度と警告は無視しないと心に誓った。
ファンタジー
公開:21/03/07 20:05
創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。
【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞
いつも本当にありがとうございます!
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