家鳴り(やなり)

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 大学の二回生の頃だったかな、通っていた大学とその最寄駅の間に新しくアパートが建った。そして友達の田村はその立地が気に入って、すぐにそこへ引っ越した。
 それから数日が経ち、僕は彼の新居を訪れていた。すると部屋に入って少しして「バキ」という音を聞いた。
 僕が怪訝な顔をすると「あぁただの家鳴りだよ」と田村は僕に説明した。
 なるほど家鳴りか。
「そんな事より、良い酒買ったから泊まってけよ」
 それから数時間が過ぎ、夜もだいぶ更けてきた。今度は「バキ、ミシ、ガン」と、立て続けに音が聞こえ、どことなくその音が僕たちのいるリビングを囲んでいるかのように思えた。
 僕は言葉を失い、家に帰ろうとゆっくりと立ち上がろうとした。すると田村は僕の腕を強く掴み、「なぁ、良いだろう? 頼むから今晩だけでいいから一緒に居てくれよ」と懇願してきた。
 僕は彼を連れてすぐにその部屋を出て、僕の住むアパートに帰った。
ホラー
公開:21/03/06 19:36
更新:21/03/08 18:34
家鳴り ポルターガイスト 新築

Azuki Smith( 横浜 )

写真撮影が趣味で、英国文学をはじめとした外国文学が好きな会社員
旅が好きでヨーロッパとアジアを中心に多く国を旅している
また、イギリスに住んでいたこともあり、英国文学に多くの影響を受けている
喋れる言語は日本語 (ネイティブ) > 英語 (アカデミック) >>...>> ドイツ語 (何とか旅が出来るレベル)

投稿内容はその他(主に紀行文)、青春、ホラー、ごく稀に恋愛(でも悲しい物語)

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