お天道さまは知る由もなく。

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おじいちゃんが言っていた。
「お天道さまが見てるからね」

「もう俺、死ぬかも」
屋上で話があると呼び出された。
また愚痴かと、げんなり。
「何回目の失恋ですか」
「何回目ってなんだよ。失恋ってのは、何時もツライもんだろ」
「まあ、そうですけど。死ぬほどのことじゃないでしょう」
「今回こそダメなんだよ。いっそ飛び降りるか」
「先輩、高所恐怖症ですよね。無理ですよ」
「だからいいんだよ。クラっとして、落ちれば済む」
震えながら強がって、柵の外に立った。
「先輩、危ないですって。下見てくださいよ。侮れないですよ、うちのビル」
柵につかまって座り込んだと思った瞬間、姿が消えた。
下の方で悲鳴が聞こえた。
「大変です! 先輩がっ」
部署に駆け込んだ。

耐えることは出来た。
けど、それは『累積』であって『解決』ではない。
我慢は貯蓄分だけ爆発する。
お天道さまは見ていない。
空には白い太陽。
ミステリー・推理
公開:21/03/06 16:35

ibara_hime

文章を削る練習をしています。
妄想は得意。感想は苦手。   ・・・・・・です。

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