記憶絵

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これは単なる版画じゃない、「記憶絵」と呼ばれている。
幾年もの記憶を重ねながら、その人の生きざまを版画に表現している。
「記憶木」という、その人の記憶を呼び覚ます特殊な樹木を伐り、版木や和紙に用いている。
あとは、江戸時代の浮世絵が絵師、彫師、摺師を経て完成するのと似た工程だ。
人生の模様や描写は、人によって織り成す絵柄や絵の構図が多種多様だ。
生まれてから今まで重ねる歳月によって色彩が違う。人生は波瀾万丈で、人によって華やかさや喜怒哀楽がそれぞれでグラデーションも異なる。
人生の浮き沈みによって彫りが変わってくる。鋭かったり、滑らかだったり、深かったり、浅かったりーー用いる彫刻刀や鑿も使い分ける。
そして、記憶の濃淡によって摺りの強さが変わってくる。これが最後の色味を大きく左右する。
そうして人生と同じような味わい深い記憶絵が完成する。
よろしければ、あなただけの記憶絵を作って進ぜよう。
その他
公開:21/03/07 07:17
版画 記憶 版木 和紙 江戸時代 浮世絵 絵師 彫師 摺師

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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