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住民に忌嫌われた山がある。

なぜそんな山に行くことにしたのか、今では思い出すことができない。ただ、入山を何度も止められたこと、それを無視し、下だけを向いて歩き続けたこと、山中で出会った老人のことだけは覚えている。

…お前、くだらんなあ

振り向くと見知らぬ老人が立っていた。
無視して進もうとした瞬間、

ぐにゃり

物憂げな表情が崩れ、老人は笑い出した。

ははははは
はっはっはっは

声はどんどん大きくなり、山全体が笑っているかのように感じた。
頭が痛い。たまらず目を閉じた。

…再び目を開けると声は止み、男性もいなくなっていた。
ふと、ミントのような香りと、眼前の絶景に気づいた。
心地よい静寂。家に帰ろう。そう思った。

神様、またやったのですね
住民の敵意を感じます

老人が笑い飛ばした負の空気は麓に向かい、山を忌嫌うエネルギーに変化するのだった。

ははは
老人は静かに笑った。
その他
公開:21/03/07 07:16

おおつき太郎

面白い文章が書けるように練習しています。
日々の生活の中で考えたこと、思いついたことを題材にしてあれこれ書いています。


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