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鬼の里に生まれながら、私には角が生えてこなかった。
両親は確かに鬼で、二人ともしっかり角が生えているのだが、稀にそういうことが起きるらしい。
私にとって最悪だったのは、角は鬼のステータスであるということだ。長くて立派な角は里中の憧れである。必然、角がない私は小さい頃から「いじめ」の対象だった。
齢十五で里に嫌気が差し、人が住む街へと下りた。
初めて街に出た時、誰も私に角がないことを気にせず、感動した。それが当たり前だからである。むしろ、角の有無で他人の価値を推し量っていた故郷の鬼達が馬鹿らしくなった。人の街は何と素晴らしいのだろう。素直にそう思った。
ところが、今日、路地裏である光景を見た。子鬼が人間の子供達に角をからかわれ、いじめられていたのだ。間違えて人の街に下りて来てしまったのだろう。
小さい頃の自分とその子鬼の姿が重なり、鬼の里も人の街も何の変わりもないことを悟った。
ファンタジー
公開:21/03/07 01:40
更新:21/03/07 02:15

リンムー( 東京 )

大学生
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