摩訶不思議な人々

友人宅で『摩訶不思議な人々』という番組を見ながら酒を飲んでいた。
「熊と闘う爺さんって多いよな」
「同じエピソードなんじゃねえの」
友人は冷蔵庫から自分で浸けたという果実酒を出してきた。
「肉って書いてるぞ。何の肉だよ。ちょっとトイレ」
友人は舌打ちをして、「トイレは無いが、代わりならある」と言う。
「オマルとか言うなよ」
「見ろよ、ここに不自然な壁あるだろ」
冷蔵庫を置くべきスペースにどんと壁がそびえている。
「叩いてみたら妙な空洞があるみたいで、酔った勢いもあいまって壁を壊してみたんだ」
ベニアを外すと壁の中にぽっかりと暗黒色の穴が空いていた。
「お前、これトイレにしてるのかよ」
「お前もしてみるか？ 気持ちいいぞ。ほら」
「ーー見てる気かよ」
「いや、人間は試したことないんだよな」
友人の不吉な気配に思わず巴投げしていた。
「あっ」
飛んだ友人は穴に落ちて行った。