トゥマゴサンド

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国道を逸れて県道から市道へ。職場である空港に自転車で向かう道すがら、いつもの神社に挨拶をする。
満開の椿が昨夜の風で落ちたのだろう。境内をぐるりと縁取るピンクの帯がとても美しくて、写真に撮ってインスタグラムにあげた。
農道を逸れて林道から獣道へ。この先は歩くしかなくてシラカシの古木に自転車を預ける。枯草に埋もれた江戸の道祖神を頼りに都市伝説みたいなパン屋へと向かう。
狼煙のあがる山中に焼けた小麦のかおり。
戦時中に不時着した米軍の偵察機がそのままパン屋として営業しているという。
タバコを燻らす年老いた米兵が店番をしながら倒れた仲間の心肺蘇生を行なっている。
私は名物だというトゥマゴサンドを買い、息のあがる彼に代わって心肺蘇生を引き受けた。
その男は少年のようだが首の認識票には生まれ年が1920とある。
「Hey man」
私はいつのまにか数人の老兵に囲まれていた。
手を止めてもいいですか。
公開:21/03/06 21:18

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