下校中に気づいたこと

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大丈夫?と並んで歩いていた友人が、首をがたっと下げた。背丈のある体を折って、目にゴミが入った俺の顔を、下からのぞきこむ。
クラス替えで会った時から、ずっと友人に抱いていた違和感が、今わかった。
こいつは、瞬きをしない。

時々いるな、こういうやつ。
飲み食いする姿を見たことがない人、耳と鼻が異様にいい人、足音がしない人。
校内で見かけると、あぁそうなのかな、と思う。
上手く気づかれずに、周囲に溶け込んでいるのが大概だ。でも誰かが怖がりだすと、騒ぎになる前に姿を消す。

今は無意識に出たのか、この顔はさすがに人間に見えない。若干ひいた。慣れるだろうか。
逆さまに垂れた顔をでこぴんする。顔が元に戻った。

人前ではとりあえず瞬きをした方がいい気がする。気の合うやつが減ることになったら困る。
何だよ痛てーと、でこをさする友人に試しに目薬を差しだす。
「こまめにさしとけよ。ドライアイになりそう」
ファンタジー
公開:21/03/05 19:57

字数を削るから、あえて残した情報から豊かに広がる世界がある気がします。
小さな話を読んでいると、日常に埋もれている何かを、ひとつ取り上げて見てる気分になります。

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