鄙(ひな)祭り

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「ひな祭りを観に行かないかい」
友人に誘われた。
「雛祭りは三月三日で女子のお祭りだろ。俺らには関係ないよ」
「いやいや、その雛祭りじゃなくて、田舎めいて素朴な感じがすることを『鄙び』というだろ。それで『鄙祭り』さ。
鄙街振興協議会という都道府県の市区町村が加盟している団体があって、神奈川は鎌倉の切通し、奈良は東大寺二月堂の裏参道、広島は福山の鞆の浦、愛媛は三津浜の港町などを鄙街に認定しているんだ。その鄙街で行われる祭りだから『鄙祭り』と呼ばれているのさ」
「そういうことなら面白そうだから行ってみよう」

後日、ある鄙街の鄙祭りへ友人と一緒に赴くと、幼少のころに見た神輿や山車が威勢よく練り歩き、その道中には賑やかな屋台が所狭しと並んでいた。
鄙祭りのフィナーレは、夜空に打ち上げられる鄙花火だ。鄙色に輝く花火で童心に帰る。
そして花火のあとに吹く風は、時空を超えて昔懐かしい故郷の匂いがした。
青春
公開:21/03/06 07:02
ひな祭り 雛祭り 三月三日 田舎 鄙び 神輿 山車 屋台 花火 故郷

SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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