美しい香り

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私が彼と出会ったのは、満開の桜の下でした。
「美しいですね」
すれ違いざまに声をかけられて、私は足を止め、頭上の枝を見上げました。
「花盛りですね。もうすぐ散りそう」
忙しさに追われ、全く目に入っていませんでした。吸い込まれそうな空に、淡いピンクがとても綺麗でした。
「桜吹雪も風情がありますね」
声の主へ目を向け、私は失言に気付きました。微笑む彼は、白い杖をついていたのです。
「ええ。あの香りも実に美しい」
微笑んだまま、彼は不思議な事を言いました。
「僕には香りが見えるんです」
「素敵ですね。私も見てみたい」
素直に答えていました。桜吹雪の香りはどんな色形をしているのか。きっと素晴らしく華やかで、心が浮き立つ姿に違いありません。
「貴方の方が美しいですよ」
光の射さない目が、じっと私を見つめます。
「眩しいほどの笑顔の香りがします」
くしゃりと笑った顔は、まるで青空の香りだと思いました。
ファンタジー
公開:21/03/05 23:49

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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