先の折れた失恋

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先輩は良い嘘つきだ。
私が大事な書類を会社に忘れた時に、クライアントに対してその書類がいかに陳腐で取るに足らないものかと言うことを力説し、ことなきを得た。ただし、私は寝る間を惜しんで準備をした企画だったので傷ついた。でも、先輩は憎めないし、好きだ。

 この間も先輩は嘘をついた。私が失恋して、落ち込んでいる時にやってきて言った。
「失恋すると、誰だって落ち込むし、周りの全てが敵に見えるものさ。自分を守ろうとするからトゲが出る。それが失恋の文字の頭のトゲだ。失の字は、先が折れると矢という字になる。これはキューピットの矢だ。つまり、失恋から立ち直るとトゲが折れ、恋の矢となる。そうやって、人は立ち直るんだ。」
今回ばかりは私も呆れて言い返した。
「無理をして理屈を失うと、先が折れて無理“矢”理になる事がよくわかりました。」
私の嘘の矢が、先輩の心の的を射た。
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公開:21/03/05 22:28

Deco

超ショートショートを作るクリエイティブディレクター

作:Deco

作家という肩書きに資格は要らないだろう。
最近、小さな超ショートショートのコンテストで最優秀賞に選ばれたことで自分の作品を好きだと言ってくれる人がいる喜びを知った。才能も努力も欠けている僕は肩書きを楽しんでいる。クリエイティブディレクターという肩書きも自分で名乗っているだけだ。
ある日、合コンで自己紹介をした。
「普段はクリエイティブディレクターをしてますが、超ショートショートの作家活動もやってます。」
女の子がツッコんできた。
「肩書きがが全然ショートじゃないですね。」
僕は反論した。
「短いのは肩書きじゃなくて期間です。」

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