私の頭の中のカマボコ

9
11

僕の父さんは蒲鉾職人だけど、どうやって作っているのかは、昔からわからなかった。
でもその年の春、遂にその現場を見たんだ。

「ねえ、いま父さんの頭から蒲鉾が飛び出たんだけど」
「うむ、どうやって美味い蒲鉾を作ろうかと必死に考えるとな、こうして出てくるんだ。蒲鉾は練り物だ、計画を"練る”とか作戦を"練る”とか言うだろ?これは文字通り"考えが固まった”蒲鉾なんだ」
「そうやって作ってたなんて…もしかして僕にも出来るかな?」
「お前も俺の血を引いているからな。そうだ、そこを開けてやってみろ」
僕は居間から廊下に出て戸を開け、蒲鉾を作る事を必死に考えた。

その日の夕食は蒲鉾だった。ちゃんと二種類ある。
父さんの白いやつと、庭の桜を見ながら考えた僕のピンクのやつ。
ファンタジー
公開:21/03/04 21:19
更新:21/03/04 22:21

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容