花
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「子を産まなければ…」
さっきまで森の中を元気に走り回っていた娘が突然そう口走った。
その眼は虚ろでどこを見ているか分からない。
私の脇を通り過ぎ、フラフラと川の方へと進む。
流水に身を浸すその姿はまるで修行僧。
「楓!どうしたの?」
娘から返事はない。その頭には大きな蕾がついていた。
「あらあら、今年は楓に寄生したのね」
祖母が娘の頭の蕾を見て呟いた。
「それはね、冬虫夏草の一種。心配しなくても切り落とせば元に戻るわ」
祖母はそう言って、娘の頭の蕾を切り落とした。
「…ママ?」
娘は不思議そうな顔で私を見上げ、涙をこぼし始めた。
「私、あの子を咲かせてあげられなかった…残してあげられなかった…」
泣きじゃくる娘の頭を祖母はそっと撫でる。
「じゃあ、残された貴方は悔いのないよう生きなさい」
娘は何度も頷く。
そういえば…私も昔、同じように泣いたっけ…
思い出した私の頭に小さな蕾が芽吹いた。
さっきまで森の中を元気に走り回っていた娘が突然そう口走った。
その眼は虚ろでどこを見ているか分からない。
私の脇を通り過ぎ、フラフラと川の方へと進む。
流水に身を浸すその姿はまるで修行僧。
「楓!どうしたの?」
娘から返事はない。その頭には大きな蕾がついていた。
「あらあら、今年は楓に寄生したのね」
祖母が娘の頭の蕾を見て呟いた。
「それはね、冬虫夏草の一種。心配しなくても切り落とせば元に戻るわ」
祖母はそう言って、娘の頭の蕾を切り落とした。
「…ママ?」
娘は不思議そうな顔で私を見上げ、涙をこぼし始めた。
「私、あの子を咲かせてあげられなかった…残してあげられなかった…」
泣きじゃくる娘の頭を祖母はそっと撫でる。
「じゃあ、残された貴方は悔いのないよう生きなさい」
娘は何度も頷く。
そういえば…私も昔、同じように泣いたっけ…
思い出した私の頭に小さな蕾が芽吹いた。
ファンタジー
公開:21/03/04 19:07
元・パンスト和尚。2019年7月9日。試しに名前変更。
元・魔法動物フィジカルパンダ。2020年3月21日。話の流れで名前変更。
元・どんぐり三等兵。2021年2月22日。猫の日にちなんで名前変更。
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