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雪が降る夜。
囲炉裏で暖をとる姫君は、縁側越しに闇の先を見つめている。

一刻ほど前、六人の子どもが楽しげな声を森中に響き渡らせていた。冬の肝試しだろうか。笑い声や軽い悲鳴、いかにも子どもの戯れのような騒がしさが、静寂の中で存在感を放っていた。
以前ならそれだけで癒された。他人が幸せなら、見聞きするだけで姫君も感情を共有できた。だが、悲嘆するあまり心を病んでいた彼女には、あらぬ欲望が、唐突に芽生えたのだ。

迷うことなく、彼女は“それ”を実行した。

濡れ衣を着せられた怒り。
家族と離散させられた悲しみ。
配流先の辺境で生きねばならぬ絶望、諦め。
この全てを忘れることが、出来てしまった。

淡い蝋燭の火は、鍋で煮えたぎる肉と山菜を、ほのかに照らし出す。何の変哲もない、いつもの夕餉の空気が漂っている。

「子どもの肉とは、如何なる味だろう……」

姫君はそう呟き、とても幸せそうに微笑んだ。
ホラー
公開:21/03/04 18:40

加賀守 崇緒( 猫屋敷 )

気まぐれなハチワレ猫です。
頭抱えながら文章を考えてます。
スイカと芋と肉と魚に、お米とお酒、ブドウが好き。
よろしくお願いします。

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