誰かに話せる恋の話なんて、それほど

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放課後、田舎のマックでしなびたポテトをつまみながら飽きずに繰り返してきた恋バナの類。
思えば、あのときの話のどこにも愛や恋はなかった。何も知らないからこそ無敵だった高校の時の私。

かわいそう。
人を好きになることなんて少しもわかっていなかったわ。あぁ、心の中に誰もいない、空虚な小娘。不憫だわ。誰にも触れられないやせっぽちの身体はなんて貧相。
恋バナと呼んではしゃいでいたのはただ友達と学校が終わってももう少し一緒にいたかっただけ。秘密めいたことを友達と共有して仲が深まったと錯覚したかっただけ。

深夜、東京の六畳一間。
まるで密室に二人きりで閉じ込められたかのような恋人との逢瀬。

あの頃、恋バナをした友達はどこへ行ってしまったの?はっとして周りを見渡すが、誰もいない。

心底人を好きになったとき、はやしたてる嬌声もない、静かで、冷たい、だけど満ち足りた孤独のなかに私はいた。
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公開:21/03/03 20:12
更新:21/03/03 21:13

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