タイプの人

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 昨日発売されたクリーム『キミ、タイプ!』
 このクリームを自分の顔に塗ると、それを見た相手のタイプの顔に見えるのだ。
 さっそく放課後に教室で塗ると、私は片想いしている先輩に会いにいった。先輩はいつも私になんて興味を示さなかったのに、今日は違った。
「キミ、可愛いね、すげえタイプ! 俺と付き合おうよ」
「はい、もちろんです!」
 素敵な時間が流れていった。が、私は気づいた。やばい! このクリーム1時間しかもたないんだった。慌ててトイレに飛び込む。……ない! どこかで落としてしまったのか。
 うなだれて先輩の元に戻る。
「お前、誰? ブスは嫌いなんだよね」

 泣きながら家に帰ると、先輩そっくりの人が家の前に立っていた。
「ほら、教室に落としてったろ」
 私にクリームを渡したその人は、幼なじみの幸樹だった。
「俺、お前のタイプに見えてるか?」
「……とっくに効果切れてるわよ、バーカ」 
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公開:21/03/03 12:54

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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