15.並列

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「…あれ?」
 少年は、長い夢から覚めたかのような、妙な浮遊感を感じていた。さらに妙なことは、今彼がいるのは自室のベッドではなく、自宅の目の前だったことだ。
「あら。おかえりなさい」
 玄関から出てきたのは、彼の母だった。
「ああ、ただいま」
 少年は家に入ると、普段当たり前に通り過ぎる動線上のものを、ひとつひとつ確かめるかのようにして自室に入った。
『家、母さん、俺の部屋。確かにある。いつも通りの場所が。その中に俺もいる』
 それを実感すると、あたたかな安堵が彼の中に宿り、微かに残っていた夢の感覚も消えていった。
 自分が死んだと思われていた、あの感覚が。

 ~

「…ええ。凝着部の分断と修正は済んだわ。この世界は、彼が生きている世界に戻った。にしても、些細な分岐で分かれた世界が再結合するこの現象、いい加減何とかならないの?今回みたいに、生者と故人の矛盾は、ほんと大変なんだからね」
SF
公開:21/03/03 11:07
SF 並行世界 日常

Arujino( 東京都練馬区 )

まずは、こんにちは。

練馬区で活動中の、趣味の絵描きです。

小説・脚本なども執筆してます。

【番号なし】 用語・設定解説

【Ⅰ】 連載作品『WonDer BroS』 探偵と怪盗の対決が娯楽化した世界での物語。

【Ⅱ】 短編連作『Story Of Dri(P)Party』

【Ⅲ】 連載作品『根源悪の牧場』 戦争による差別と弾圧に支配された世界での物語。

【Ⅳ】 連載作品『ドライワンダーに遣う』

【001~】 短篇集『short TaleS』
 

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