ネモフィラの海

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夏の海で出会った。
秋の海でデートした。
冬の海で別れた。
春の海へは、ひとりで行く。
車のエンジン音が、ちょっとだけテンションを上げる。
赤信号で止まり、案内板が目に入る。
↑蓮藍海岸(仮) →独深丘陵(仮)
次の信号機でハンドルが右へ回る。
切なく、哀しい、そんな未練は嫌だ。
小高い丘に着くと車を降りて深呼吸した。
空気が美味しい気がして、背筋も伸びる。
ひとりでポタポタと公園内を歩いていく。
人も少なくて、こんないいとこあったんだと気が緩む。
一面の青。
上から見たくなって、なまった身体を叱咤する。
峰らしき場所に着き、息ひとつ。
顔を上げる。
なんていい天気。なんて可愛らしい花。
空と大地が一体化しているかのよう。
瞳から落ちたのは、なに。
ずいぶんしょっぱい。
広がるネモフィラの海。
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公開:21/03/03 01:24

ibara_hime

文章を削る練習をしています。
妄想は得意。感想は苦手。   ・・・・・・です。

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