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僕は恋をしていた。車でMISIAの「恋する季節」を聴きながら心地よく運転していた。僕は彼女のマックスの顔を容易に思い浮かべることができる。僕もマックスの顔に至りたかったが彼女の前以外ではそれを出せなかった。僕は彼女が必要だった。しかしあるとき彼女は何の前触れもなく僕の前から去ってしまった。僕は途方に暮れた。そして顔は能面のように表情のないものになってしまったような気がする。やがて笑っている人に憎しみを覚えるようになった。僕は包丁を手に駅前にやってきた。通り魔事件を起こしてやろうと思ったのだ。だがそこに顔はなかった。僕はトイレに行って自らの顔を鏡で見た。顔があった。よし大丈夫だ。僕は落ち着きを取り戻した。僕は包丁を懐に隠しながら自らの部屋に帰宅した。あのときの彼女はいないが僕には顔がある。それがわかった。これからは顔のある人を探していくことになる。それがみつかったとき僕は幸福になれるだろう。
その他
公開:21/03/01 20:36

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