鎧の男

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ここのところ毎日、変な夢を見る。
下半身が無い鎧の男が「足をくれ、足をくれ」と話しかけてくるのだ。何もできずに困っていると、男は体を引きずりながら消え、目が覚める。

不思議なことに、私はこの男を知っている気がする。だが、いくら悩んでも正体は思い出せず、毎朝布団の上で頭を抱えた。

そんなある日、部屋の掃除中に押し入れの奥から古いノートが出てきた。
ノートを開くと、乱雑に絵が描かれている。子供の頃使っていた落書き帳だろう。懐かしくて、次々とページをめくり、最後のページで手を止めた。

そこには夢に出てくる男によく似た、鎧を着た男が胴体から上まで描かれていた。絵の下には不自然な余白がある。どうやら途中で飽きて描くのをやめたようだ。

まさかとは思ったが、絵に下半身の鎧を描き加えた。

その日の夜、全身を鎧で固めた男が夢に出てきた。

「ありがとう」
そう言うと、男は颯爽と走り去っていった。
ファンタジー
公開:21/03/01 18:23
更新:21/03/01 19:09

リンムー( 東京 )

大学生
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