愛と善意の国と王様

　昔々、あるところに愛と平和を尊ぶ王様と国がありました。王様は人々に愛を説き、互いに支え合えと命じました。人々は喜び、平和な日が続きました。

　ある日、隣国の王子が国を訪ねました。
「この国の果実はまずく、肉も臭い。平和ボケして競争意識が欠如しているようだ」
　怒った王は王子を殺してしまいました。

　またある日、隣国の宰相が国を訪ねました。
「この国の経済は破綻している。王が未熟で知識も経験も足りない」
　怒った王は宰相を殺してしまいました。

　王子と宰相を失った隣国は、国を亡ぼすべく軍を向けました。国の兵士たちは頭も体も心も弱く、皆が一斉に逃げ出しました。

　敵に囲まれた王様は、わけのわからないことを言いました。
「俺が一番なのに、俺が一番優秀なのに…アイツら突然湧いてきて、デカイ顔するから殺した。なあ…俺の何が悪いんだ？」
　その日、愛と平和を尊ぶ国は滅んでしまいましたとさ…。