走馬灯の感想文

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走馬灯の感想文が死後の宿題でなくて良かった。
私の八十四年間には山も谷も無いのだから。

もし感想文が宿題だったら、子どものことを書きます。
幼な子は面白いですね。
「おたんちん」なんて、一体どこで覚えてきたの。

子どもはすぐに大きくなります。
「何にも分かってない」とすれ違った日もありました。
ボロボロで帰ってきた君の代わりに、いじめっ子の家に突撃したこともありましたね。

君が二十歳になったとき、なぜかホッとしたのを覚えています。
就職してからは盆と正月だけ会う関係でしたが、最期は私の手を潰すほど強く握ってくれました。

ありがとう、愛しい思い出たち。
あなたがたは今から前世。
記憶が消えることを想うと胸がチクチクします。

さよなら。
そして、どうぞよろしく、新しい家族。

赤ん坊が泣きながら産まれるのは、思い出と別れて悲しみだけが残るから。
喜びや痛みを学び、私たちは大人になる。
ファンタジー
公開:21/03/01 22:22

明菜

美術ブロガー/ライターの明菜です。
ショートショートを読む楽しさを知り、自分でも作ってみようと思いました。
芥川龍之介の超短編と小川未明の童話が好き。
ツイッター⇒https://twitter.com/akina_art/

※エブリスタでバックアップを取っています。
https://estar.jp/users/481074844

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