とある王子のままならない人生

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随分昔のことだが、この辺には獣の王子が住んでいたそうだ。
ある日城を訪れた魔女を無下に扱って、呪いをかけられたんだとか。

僕のところにも、浮浪者の姿で彼女はやってきた。もちろん丁重に扱ったよ。人は物語から学ぶことができる。彼女は一つ、望みを叶えてくれると言った。

僕は、獣の王子とは違って元から醜かった。おかげで、誰も嫁になりたがらない。だから言ったよ、僕を美しい王子にしてくださいって。

魔女は約束通り、僕に魔法をかけてくれた。いま君が目にしている男がそれさ。代償に、この通り美しい宝石を喰らい続けなくてはならなくなった。十年足らずで、金庫の中身は半分に。

婚約は形の上でだ。君の起業を後押しするよ。君はやりたいことをやりながら、僕を養ってくれればいい。

美しくなればなったで、人を信用できなくなった。かといって、元の姿は大嫌いだ。戻りたくない。

人生はままならない。そう思わないか?
ファンタジー
公開:21/03/02 07:00
更新:21/03/01 21:31

レオニード貴海( 某海なし県 )

さまようアラフォー主夫

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