向こう側の生活

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建物に入ると向こう側には人がいた。酒を飲む者、麻雀をする者。それぞれにくつろいでいる。
男が訳を聞くと、おじさんは答えた。
「ここでは楽しい時間を過ごさせてあげてるのさ」
「そんな事全然知らなかった」
「だろうね。知るとここに来たがる人が増えてしまう。だから絶対にばれてはいけないんだよ」
「確かに、でもなぜ?」男は納得できなかった。
「良い待遇をすると、彼らはここに居続けたいと願う。しかも、彼らは仲間を教えてくれたりする。ここは最高の場所だからね」
「でも納得できません。だって彼らは囚人ですよ。しかも終身刑の」
「あぁ。だから彼らの脱走なんて絶対に許されない。しかも彼らみたいなのは口が堅いんだよ。無駄に警備を強化し、共犯者を探すより安くすむ」
「ですが、この金は税金なんじゃ?」
「少ない税で最大の安心を与える。これが我々の勤めだと思わないか?」
今日から男は看守として働く。税を払いながら。
その他
公開:21/02/27 20:25
更新:21/02/27 20:26

ミケーレ

twitter: michele_novel
大学生です、時々更新していきたいと思っています。

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