カトレア戦争

かつてヨーロッパでは、カトレアを巡って戦争が起きたらしい。
恋愛結婚など夢のまた夢であった頃だからこそ、人々は想い人の気持ちを手に入れることに奔走した。

白いカトレアの花言葉は、「魔力」

大釜いっぱい分のカトレアを煮て、そのエキスを凝縮したものを飲むと、彼女たちは必ず意中の彼らを好きなように出来たという。
だが、人口爆発など起こったことはなく、寧ろ繰り返される戦争や疫病で人々は減少していった。
どうしてだろう。
僕はその謎を解くべく、庭で栽培したカトレアを、小さな鍋で煮詰めて飲むことにした。

それから隣の家に住む、林檎を売る彼女に会えば、彼女は手に持つ禁断の果実のように頬を染めて僕を見る。
だが、ある言葉を言われると胸がとても苦しくなった。

好き。

ああ、そうか。
魔女となった彼女たちはこの言葉を最後に星となったんだな。


人を想うとは、思い通りにならないから愛おしいのだろう。