月を跨ぐ

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姉様、どうして私たちはこの星から出られないのでしょう。

白く、淡く、まだ生命体として不完全な妹は問うた。
月に生きる私たちは、この場所でしか息を吸えない。

この星は、誰かに悲しみも愛情も、そして穏やかな気持ちも連れてくるらしい。
遠く離れた惑星で、見て感じる景色はどれほど美しいのだろうか。

「私たちが、私たちであるために出られないのよ。でもね、」





いつか、私たちは別の場所に行けるのよ。




気まぐれな、神と呼ばれるなにかが、ぽっとこの星にそっくりなものを作ることがある。
その時だけ、宙にはいくつもの星々が集まり、道ができると母様は言った。

私たちは、その時から自由になれるわ。

合図は、あの燃え盛る太陽が、ゆらり、と揺れて大きく火柱があがったら。


「姉様、お天道様が。」

遠くの方で見えたのは、私たちの希望の火花だった。
ファンタジー
公開:21/02/27 08:38

( 東京 )

色んな色の作品を目指します。

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