思い出ドロップス

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「はい、三年前の夏祭りですね。かしこまりました。」

俺は、小さな町にある飴屋を訪れていた。
指定の思い出を閉じ込めた飴を口に放り込めば、その時の香り、食べたものの味、そして目を閉じると情景まで浮かぶという。
半信半疑で買ってみたものの、確かに店には膨大な数の飴が瓶に入っており、胸はトクトクと、鼓動を速める。
会計は思い出を味わってからでいいと言われ、俺は受け取るとすぐに口に飴を含んだ。

海が近い町だった。
鼻を抜ける潮の香りと、君と食べた焼きそばの味。
少し汗ばんだ君に、言葉にできない色香と熱を感じた。
「暑いね。」
そう言って微笑む君は、くらくらするほど、俺を魅了する。

ああ、やっぱり、君じゃなきゃだめなんだ。
俺は、事故で眠姫となった彼女の両親へ彼女ではなければいけないと伝えるべく、涙ぐみながら代金を支払った。

「ありがとうございました。またのご利用お待ちしています。」
その他
公開:21/02/26 22:38

( 東京 )

色んな色の作品を目指します。

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