着ぐるみバニー

採用された初日に連れていかれたのはモールの事務所。主任から着ぐるみを渡されて「これでお客さまにキャンディを配る。喋ってはいけない」
着ぐるみの俺は大きな頭と耳のウサギで身体は艶っぽいバニーガールだ。「子どもと大人に好かれる格好」とか。
モールでキャンディを配った。みんな嬉しそうに受け取る。午後に一人の男に渡そうとすると手をはねられた。もう一度渡そうとすると男は俺の持つカゴを叩いて「いらねえよ！」カゴごと飛び散った。俺が這ってキャンディを拾うと男は「金欲しさにこんなバカな仕事をやってるんだろう！」俺はこの場を収めたくて土下座した。ついには泣き出してしまった。嗚咽を男が聞いて「泣くなよ。送ってやるよ」俺はもう帰りたかった。男の後を歩いた。
男の車に着ぐるみのまま乗った。車は駐車場を回ってモール裏口につけた。事務所の入口だ。男と事務所に入った。主任が言った。「テスト合格。今日から働いてもらおう」