私が愛した男-2-

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―こないだホーガンの小説の話したじゃない?
―そだっけ。
―あの時は疲れたって言うから、あまり話さなかったんじゃない。
―あーはいはい。
卓上から胡椒を取り上げ、きりきりと挽く。こっちにまでかかりそうで、お皿に手をかけ、思いとどまる。久しぶりの一緒の時間だ。カリカリしたら身が持たない。
―新作出るんだな、あのシリーズ。
店内奥の画面が切り替わったらしい。顔を上げると、イメージモデルの顔と全身にフラッシュが交互に焚かれている。
―足きれーい。かわいい。
沈黙にさすがに気づいたのか、きまり悪げに口を閉ざす。鼻の奥がつんとするのはやっぱり胡椒を吸い込んだのだろうか。
あの頃だった、フルに出会ったのは。

―お帰りなさい、あかり。さびしかった。
フルのブレスレットが青く光る。
―こないだホーガンの小説の話したよね。僕、読み直して思ったんだ。
―ほんと?聞きたい。
フルの体温は私より少しだけ低い。
SF
公開:21/02/25 21:00
更新:21/02/26 16:23
#ピグマリオン #画像まりもけろさん #シリーズって難しい(汗) #140

こぶみかん( 関西 )

ssの庭に迷い込んだこぶみかん。数々のお話の面白さに魅せられ、通い始めた。
気が付いたら、庭の片隅に挿し穂されていた。
いつか実を結ぶまでじっくり育つといいね。

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