縁日

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 地元の神社の縁日に久しぶりに顔を出した。
 高校に上がって以降は訪れたことがなかったので、小さな神社の境内に所狭しと並んだ屋台や、そこここで笑い合ったり歓声を上げている人々の多さに驚いてしまった。
 縁日は気分が高まる。それは、同じ場を大勢の人と共有しているからなのだろう。私は久しく感じたことのないワクワク感を胸に抱きながら、神社の参道を歩いていた。
 ふと、人混みに知った顔を見つけたのは、正にそんな時だった。視線が合って思わずエッと声に出してしまう。それは五年ほど前に亡くなった高校時代の友人だったからだ。私たちは人の流れに逆らって立ち止まった。
「お前、どうしたんだよ。幽霊になったのか?」
「お前こそ……化けて出たのか?」
 友人の顔は真っ青だった。私も同じだっただろう。会話の噛み合わなさも不気味だった。
 私たちはそれっきり何も言わずに別れた。
 以来、神社の縁日には言っていない。
ファンタジー
公開:21/02/25 20:29
不思議なオモチャ箱

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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