高圧的な男

「ヤワなこと言っとると奥歯ガタガタ言わせたるで！」
借金の返済猶予のため事務所にやってきた社長に対し、男は高圧的にニラミをきかせていた。そんな罵声を聞いて隣の部屋では下っ端たちが話をしていた。
「相変わらずあの人は厳しいですねー。なめられるのがこの世で一番嫌いですもんね」
「まあもちろん俺たちはなめられたら終わりよ。メンツで食ってるわけだからな。でもアイツはな……それだけじゃねぇんだよ。もともとそういう生き物なんだよ」
「……はあ、生き物ですか」
「うちもな世相に合わせていろんな人材を集めててな、いわゆる"ダイバーシティ"ってやつだな。切り込み隊長の『鉄砲玉』に、おちゃらけ担当の『表六玉』、場所を考えずに怒り散らかす『癇癪玉』と、いろんな人材がいればいろんな場面に対応がきくってもんよ」
「なるほど。――それであの人は何なんですか？」
「アイツはな、『あめ玉』よ。なめられたら消えちまうのさ」