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道路に、アスファルトそっくりの蛾がぺったりと翅を広げて止まっていることになど、気づけるはずはない。クチュという微かな音と、何かを踏んだときの感触が掌に伝わってきた。急ブレーキをかけて、何を踏んだのだろうと戻ってみると、路面に何かが飛び散ったような染みがあって、その付近に目を凝らしてみて、ようやく、そこに蛾がいると分かったほどだ。その蛾の翅には、斜めに横切るように白いラインがあって、そのラインと道路の白線の境界とがぴっちり合う位置に屍骸があった。
ハハン。擬態というやつだ。
僕はそう思って自転車に戻ったのだが、いったい、あんな擬態が何の役に立つというのだろう?
上空の鳥には有効だろうが、こうやって踏み潰される危険のほうがずっと多いのではないか?
スクランブル交差点に差し掛かり、車の往来を眺めていると、クチュクチュという音がひっきりなしに響いた。
交差点が無数の染みに濡れていく。
ハハン。擬態というやつだ。
僕はそう思って自転車に戻ったのだが、いったい、あんな擬態が何の役に立つというのだろう?
上空の鳥には有効だろうが、こうやって踏み潰される危険のほうがずっと多いのではないか?
スクランブル交差点に差し掛かり、車の往来を眺めていると、クチュクチュという音がひっきりなしに響いた。
交差点が無数の染みに濡れていく。
その他
公開:21/02/26 16:36
更新:21/02/26 16:40
更新:21/02/26 16:40
新出既出です。
twitterアカウントでログインしておりましたが、2019年末から2020年年初まで、一時的に使えなくなったため、急遽アカウント登録をいたしました。過去作は削除してはおりませんので、トップページの検索窓で「新出既出」と検索していただければ幸いです。新出既出のほうもときおり確認したり、新作を挙げたりします。どちらも何卒よろしくお願いいたします。
自己紹介:「不思議」なことが好きです。
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