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 顔を洗おうと洗面所へ向かった。
 いつものように何気なく鏡を見ると、そこには自分の姿が映っていなかった。あったのは、どことも知れない不思議な街だった。
 木造の家は日本家屋のようにも見えるのだけれど、屋根の上には人魚のような置物が置かれている。魔除けなのだろうか。
 鏡の中央付近には、真直ぐ一本の道が続いているのだが、その道もよく見れば薄く水がついているようだった。ユラユラと道の上を揺らめく水を見ていると、そこにフッと小さな影が映った。小魚が泳いでいるのだ。
 私はしばらくの間、この穏やかな風景を眺めていたのだけれど、急に、景色の中に人が誰もいないことに気が付いた。
 途端に、何だか怖くなってしまい、私は逃げるようにして洗面所を一旦離れた。
 五分ほど経ってから、恐る恐る洗面所に戻ると、鏡には自分と洗面所の光景しか映らなくなっていた。
ファンタジー
公開:21/02/25 07:44
更新:21/02/25 07:45
不思議なオモチャ箱

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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