福々さん

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ある小間物屋に『福々さん』という女中がいた。
名前の通り体も顔もふくふくとして大きく、そればかりか頭も南瓜のように大きかったという。

この福々さん、あまり人と話すのは得意ではなかった。大変な働き者ではあったのだが、どうにも人と話をするとちんぷんかんぷんになってしまい、てんで会話にならないのであった。 そんなものだから、朝早くにお店の前を掃除したら、すぐに奥へと引っ込んでしまい、滅多に表に出てくることはなかった。

するといつの間にか、福々さんと会話を交わした者には幸せが訪れると、この界隈で噂が広まりだした。確かに毎朝、福々さんとやりとりをする棒手振の魚屋や水屋は商売繁盛が高じて小さな店を持ったり、大きな船を買い換えたりしていた。

噂を聞きつけた金貸しが、無理矢理、福々さんを連れていってしまった。 だが間もなく金貸しの身代は傾き、一家は夜逃げで消え、福々さんも忽然と消えてしまった。
その他
公開:21/02/25 01:42

茎田きみゆ( 東京 )

書くのが好きなのでとりあえず思い付くまま書いてます。週に一、二本を目標に書いていきたいですが、休むときもあります。 得意ジャンルはありません。
アイコンを変えました。特に意味はありません(^_^ゞ
2021.4.5
ペンネームを『小山田みゆき』から変えました。

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