眠り姫

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 青白い顔のユイは自らの意識を深く沈め、脳にたくさんの機械をつけられて眠っている。
 アプリ『眠り姫』の中で彼女は夢の海を泳いでいた。

 僕らは児童養護施設で育った。ふたりとも引き取り先もなく、18歳ギリギリまで施設で暮らしていた。
「ねえ、私たち、生きててなんの意味があるんだろうね」
 吐く息も凍る冬の朝、ユイがポツリと言った。僕は何も言えなかった。

 施設を出た後、ユイからの連絡は途絶えてしまった。僕はユイを探した。
『眠り姫』は、睡眠時に少女が現れて心を癒してくれるというアプリ。少女は、ユイだった。

「これは彼女の意思。無理に起こせばエラーで記憶が飛ぶかもしれませんよ」
 白衣を着た男が僕に告げる。
 それでも。
 それでも僕はユイと一緒に生きたいんだ。
 僕はユイの頭に繋がっているコードを引きちぎった。警告音が鳴る。
 
 ユイはゆっくりと目を開けると、僕の名を呼び、泣いた。
その他
公開:21/02/24 23:27

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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