青い月

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 月が綺麗な夜だった。仕事が遅くなり、帰るのが真夜中近くになっていた。身体はもうクタクタで、ご飯も食べていなかったが、風呂に入ってそのまま寝てしまおうなどと考えつつ空を見上げて、ピタリと足が止まった。
 その夜の月は驚くほど青かった。まるで、海のような色をしていたのだ。
 他に誰もいないことをいいことに、私は魅入られたように、青い月を眺めていた。
 ああ、あの月の光が導く先まで行けたら素敵なのに。そうすれば、ヘトヘトな暮らしともおさらばできるんじゃないだろうか。
 珍しく、らしくない思いに駆られた途端、私の身体が宙に浮いた。何だか背中がむず痒かったので、そこを動かして見ると、背後で羽搏きが聞こえた。慌てて確認すると、身体が青い羽毛に包まれていた。
 何が起きているのか分からず、慌てふためき、甲高い鳥の様な鳴き声を発する私に向かって、月が低い笑い声を漏らした気がした。
ファンタジー
公開:21/02/25 16:40
不思議なオモチャ箱

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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