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上京して二度目の夏が終わろうとしていた。
アパートは急坂の頂にあり、ベランダからは街が一望できる。光に溢れた静かな街。吹き渡ってくる暖かな風を肺に馴染ませると、少しだけ優しい人間に成れたような気がする。
ある日部屋に戻ると、見知らぬ人物が窓枠に腰掛け、白い髪を微風に揺らしながら外を眺めていた。僕は慌てて部屋を出、玄関で立ち止まった。
いや? ここは僕の部屋だ。間違いなく。
「あのう」
振り向いた少女は興味なさげな目で僕を見た。
「ここは僕の部屋だと思うんだけど」
「ああ、ごめんなさい。ちょっと羽を休めてたの。すぐ行くわ」
言うと彼女は手すりの上へ、すっ、と飛び乗った。
「あぶないよ」
彼女はチラ、とこちらを見、小さく呟いた。
「優しいのね?」
巨大なジャンプ傘を開くような音を立てて翼膜が広がる。
「じゃあね、少年」
彼女が去った後、ベランダには翡翠色の鱗が一枚、残されていた。
アパートは急坂の頂にあり、ベランダからは街が一望できる。光に溢れた静かな街。吹き渡ってくる暖かな風を肺に馴染ませると、少しだけ優しい人間に成れたような気がする。
ある日部屋に戻ると、見知らぬ人物が窓枠に腰掛け、白い髪を微風に揺らしながら外を眺めていた。僕は慌てて部屋を出、玄関で立ち止まった。
いや? ここは僕の部屋だ。間違いなく。
「あのう」
振り向いた少女は興味なさげな目で僕を見た。
「ここは僕の部屋だと思うんだけど」
「ああ、ごめんなさい。ちょっと羽を休めてたの。すぐ行くわ」
言うと彼女は手すりの上へ、すっ、と飛び乗った。
「あぶないよ」
彼女はチラ、とこちらを見、小さく呟いた。
「優しいのね?」
巨大なジャンプ傘を開くような音を立てて翼膜が広がる。
「じゃあね、少年」
彼女が去った後、ベランダには翡翠色の鱗が一枚、残されていた。
ファンタジー
公開:21/02/25 22:00
更新:21/02/25 17:23
更新:21/02/25 17:23
さまようアラフォー主夫
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