Complex words

残りひとひらになった花みたいな顔をして、彼女は恨めしそうに僕を睨め上げた。
「私、このままじゃやっていけない」

「どういうこと？」
彼女は「馬の耳に念仏を唱えろって言うの？」というような顔をして力なく笑った。
とは言えある日突然何の予兆もなくニンジンを取り上げられる馬の身にもなってほしい。僕は確かに鈍くて気の利かない唐変木かもしれないが、鈍くて気の利かない唐変木なりに気を利かせてはいるし、君のことを考えているつもりだ。

「あなたは私のことをなおざりにしている」
「それは言いすぎだ」
僕は反論した。
「少しばかりおざなりにしていたことはあったかもしれない。でもなおざりになんかしてないよ」
「そういうところ、私は理屈を言ってるんじゃないのよ」
「じゃあ何を言ってるんだよ」
「どうしてわかってくれないの？」

僕は彼女の弦をピン、と弾いた。
ホコリを被ったレスポールが久々に音を鳴らした。