ペットボトル

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 何気なく自動販売機で買ったペットボトルの中には、大きな桜の木が入っていた。
 私は自分が押した自動販売機のボタンを確かめた。間違いない、私はお茶を買ったのだ。
 けれど、出て来たのはペットボトルに詰められた桜の木。どう見ても、お茶には見えないし、飲み物ですらない。
 一体、どうなっているんだろうと思いながら、何気なくペットボトルの蓋を開けた。すると、プシューッと妙な音がして、次の瞬間、桜の花弁がペットボトルからふき出し、風もないのに渦を巻いて空高くへと飛んで行った。
 桜の花弁が渦を巻いている様は、まるで桜色をした龍が飛んでいるように見えた。そのためか、頭上から猛々しい雄叫びのようなものが微かに聞こえたようにも思えた。
 私は桜の渦が見えなくなるまで空を眺めていたが、あることが気になって、右手に握っているペットボトルを見た。
 案の定、桜の木は消えていた。
ファンタジー
公開:21/02/24 20:01
不思議なオモチャ箱

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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