歌う石像

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 いつも食料や日用品を買っているモノズキヤというスーパーに行ったら、歌う石像というものが大安売りされていた。
 それは花崗岩で作られた鳥で、鳥の羽一本一本までもが丁寧に彫り込まれているのだった。鳥は花崗岩で作られた鳥籠の中に入れられていて、時折、小首を傾げながら色々な歌を歌っていた。
 そのどれもが、どことも知れぬ外国の言葉のようで、私にはチンプンカンプンだったのだけれど、歌としてというよりは、音楽として聴けば、不思議と気分がよくなるように感じられるのだった。
 鳥籠に付けられた値段を見ると、二五〇〇〇円とあった。大安売りにしては少し高いと思ったが、買えない額ではなかったので、私は手近にあった籠を取ると、それを他の品物と一緒にレジへと運んだのだった。
 以来、私はリビングの窓辺に籠を置き、石の鳥が奏でる歌を聞くのを日課にしている。
ファンタジー
公開:21/02/24 07:24
更新:21/02/24 07:33
不思議なオモチャ箱

海棠咲

 幻想小説や怪奇小説を自由気ままに書いています。
 架空の国、マジックリアリズム 、怪談、残酷なファンタジー、不思議な物語が好きです。
 そこに美しい幻想や怪奇があるならば、どんなお話でも書きたいと思います。

 アイコンは宇薙様(https://skima.jp/profile?id=146526)に描いていただきました。

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