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「なにしてるの」
 公園の桜の木の下でひとりで遊んでいたら、女の子に声をかけられた。女の子の目はキレイな真珠色だった。
「あなほってるの」
 女の子は落ちている枝を拾うと、僕と一緒に穴を掘り出した。
「人魚姫って知ってる?」
 僕が頷くと、女の子は僕をじっと見つめた。
「私もね、もうすぐ泡になっちゃうんだ」
「足があるのに、人魚なの?」
「まあ、そんなとこ」
 桜の花びらが突然はらはらと散り始めた。ビックリして木を見上げると、ざあっと突風が吹いて桜の花びらが舞う。

「泡になるの、泡に、泡に」

 僕は怖くなった。
「一緒に行こ」
「いやだ」
 僕が後ずさると、女の子は悲しそうに笑った。
 女の子はそのまま溶けるようにすうっと消えてしまった。

 僕のひいばあちゃんは昔、生まれ故郷である海に散骨されたと聞いた。
 埋立地だったあの公園の桜は枯れてしまい、女の子ともそれきり会えていない。
その他
公開:21/02/22 13:02
更新:21/02/22 14:49

深月凛音( 埼玉県 )

みづき りんねと読みます。
創作が大好きな主婦です。ショートショート小説を書くのがとても楽しくて好き。色々なジャンルの作品を書いていきたいなと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
猫ショートショート入選『ミルク』
渋谷ショートショートコンテスト優秀賞『ハチ公、旅に出る』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[節目]入賞『私の母は晴れ女』
ベルモニーPresentsショートショートコンテスト[縁]ベルモニー賞『縁屋―ゆかりや―』

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