玉響の鈴

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太陽にシャッターを切った時、りぃんと澄んだ音を聞くと、あぁ居るなと思う。
現像した写真に、目には見えなかった光の玉が映っている。オーブ、あるいは玉響現象。空中の微粒子、もしくはカメラの内部で光が反射しただけの光学現象。理屈で説明はつくけど、この音は違うんだ。
ころんと丸い光が、よく見ると鈴の形をしている。
りぃん、ちりん、りりぃぃん。連続写真を転がっていく光の鈴を、決まって追い掛ける雲がいる。
結ぶ度に引っかき落として、前肢で弾くのが好きだった。

ねぇタマ。そこは居心地が良いかい?
鳴き声の届かない上空から、鈴音だけが降って来る。
遊び好きで気まぐれなお前に、天国は物足りなかったんだろう。そのうち天の猫窓が閉まって、帰れなくなったんじゃないか。

ねぇタマ、どうせなら、降りて来て遊ばないか?
お前の鈴はまだここにあるよ。
――ねぇ、

今日も返事はないまま、快晴にりぃんと鈴音が渡る。
ファンタジー
公開:21/02/22 23:59
2/22猫の日に寄せて

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書きもどきをしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.13執筆&編集
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞 2022年6月作品集出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞
第二回ひなた短編文学賞 双葉町長賞

いつも本当にありがとうございます!

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